フィロティモス偸生記

καθεύδειν αὐτὸν οὐκ ἐῴη τὸ τοῦ Μιλτιάδου τρόπαιον.

ラブストーリーにはかされた下駄

時折ラブストーリーへの批判に対して「それはあんたが碌な恋愛を経験してないから楽しめないんだ」という返しがなされるのを見る。

でも、俺は思うんだが、人を殺したことがなくてもサスペンスは楽しめるし、その時代を生きていなくても歴史映画は興奮できるし、宇宙戦争を戦ったことがなくてもスター・ウォーズは面白い。

つまるところ作品の面白さとそれの受け手の経験の有無はそんなに関係ないんじゃないか。むしろ、特定の性質を持った人じゃないと楽しめないというのはその作品自体の力ではなく、クラスの人気者の商業ではとても通用しなさそうなギャグや、我が子の稚拙もいいところの絵のように、それの受け手の私的な共感や思い入れで下駄をはかされた結果じゃあなかろうか。サスペンスや歴史映画の面白さは普遍的だが、二流のラブストーリーのそれは局所的なものというわけ。だからろくに恋愛をしたことのない人を楽しませてこそ一流のラブストーリーなんじゃなかろうか。下駄をはくことなく等身大の実力で楽しませてるんだから。

そういうわけで「それはあんたが碌な恋愛を経験してないから楽しめないんだ」という返しは、「それはあんたがウチの子の可愛さを知らないからこの絵の良さが分からないんだ」と同じことを言ってるわけだ。これは親馬鹿だが、前者の場合はこれから「親」が引かれる。