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フィロティモス偸生記

καθεύδειν αὐτὸν οὐκ ἐῴη τὸ τοῦ Μιλτιάδου τρόπαιον.

esse is percipi」を「バレなきゃ大丈夫」の意味で使うことで若かりし日の哲学のお勉強を無駄遣いする日々。

悪の高揚感

会社に隠れて転職活動をしていると「出し抜く」という言葉の甘美さに気づかされる。この言葉に包含される抜け目のなさと狡猾さと果断さ、そしてほんの一滴の悪を噛みしめる時、俺はまるで自分が正々堂々たる王者に対して狡猾で残忍、卑劣極まりない陰謀をめぐらす野心家、あるいはこの世の春を謳歌する金持ちを銀色に輝くあいくちを握りしめて闇夜の街路で待ち伏せする夜盗にでもなったようなじんわりとした高揚感を覚える。

奴隷は死ね、人間は生きる

news.nicovideo.jp

この経験を振り返って汐街さんは、「過労自殺と聞くと『死ぬくらいなら辞めればいいのに』と、思う人は多いでしょうが その程度の判断力すら失ってしまうのがブラックの恐ろしいところなのです」と綴っている。漫画では例えとして、元気な時は「退職」「転職」「サボる」といった多くの分かれ道や扉が見えているが、真面目な人ほどそれを「親に心配かけたくない」などと塗りつぶしてしまう様子が描かれている。そして、何度も塗りつぶしているうちに、長時間労働が思考力や視界を奪い、残された道は到底登ることができない崖のみになり、力尽きてしまう。

利己性とプライド、怒りを失った人間は人間じゃない。動物以下だ。そんな奴はものを言う道具であり、壊れた場合には舌打ちをしながらゴミ箱にでも放り投げるというのがそれへの扱いとしては順当だ。顧慮やリスペクトには値しない。まっとうな人間ならギリギリまで追い詰められるよりももっと早い段階で「この糞企業がァ!」と思うはずだ。自分のお人よし、臆病、グズ、怠慢、無能、消極性を人様のせいにしてほしくない。そんな扱いに怒りもせずに反抗しないことでブラック環境の維持と再生産に加担するのをやめてさっさと力尽きてくれくれたほうが世のため人のためというものだ。

人間としての尊厳を顧慮され、リスペクトを受けるに値するのは自分のプライドや名誉を侵された時に怒り、逃げるにせよ戦うにせよとかく反抗することができる者だけであり、そのようなものだけがものを言う道具ではなく、一人の人間とみなされ、扱われるべきなのだ。こんなカス野郎に比べれば、反乱を起こして主人を血祭りにあげた奴隷、そこまでいかなくとも手を抜いてサボタージュする奴隷のほうがよっぽど人間としての尊重に値する。ブラック企業にひどい扱いを受けた時など、隠れて転職活動をしながらこの面従腹背を楽しんだり、急にバックレて会社の連中の吠え面を思い描いてせせら笑うくらいではなけばいけない。それでこそ人間だ。俺なんてパワハラ野郎にこき使われるバイトを二回バックレ、運悪く糞企業に入った時には入社半年程度で転職活動を開始し、転職を実行したくらいだ。俺はその点まことに人間としての誇りと尊厳に満ち溢れた益荒男だといえる。

書きたいことを書き終わったので、ここいらでアンドレ・ジッドの言葉でもってこの愚痴を締めたい。

反抗し、憤ることのできない精神は無価値な精神だ。……物事はそう簡単に受け入れてはならない。(『Journal』より)

 

死を無駄にしないために徹底的にこき下ろせ

headlines.yahoo.co.jp

何気の抜けたことを言ってんだか。

むしろ理不尽な扱いを受けようとも辞めないで大人しくしてるような奴を馬鹿だグズだカスだと徹底的にこき下ろすことで一人ひとりの労働者が「理不尽な扱いを受けようとも勤め続けることは恥ずべきことだ」と思うように意識改革を促すべきなのよ。

そうすることで明日過労死するボンクラを一人でも減らすことができる。さもなくばその自殺者の死は犬死ということになってしまう。

百舌勘定

ノーベル賞を受賞した先生に倣って「研究に金をかけないとは何事だ!」と憤った物言いをよく目にするが、そのために多少の増税を我慢するとか、自分ができる限りで寄付をするとか誰も言わねえのな。意図的に金の話を避けてるんじゃないかというくらいにそこんとこにはノータッチだ。

結局は誰も口は出すが銭は出さない、出すとすれば自分以外の誰かだと当て込んでいるんだ。

 

じゃあ俺はどうだって? 前の前の記事でも書いたように、納得できることなら税金という形ででも多少の銭を出してもいいと思ってる。少なくとも文句を言うだけで空から金が降ってくると思ってる奴らとは違うつもりだ。

「自分と他人を比べて一喜一憂するな」っていうのは胸のすくような正論だけど、「それができれば苦労はない」論の最たるものでもある。誰だって比べずに済むのならそうしたいと思ってるけど、否が応でもついつい比べてしまうんだ。